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メトロポリス(りんたろう監督作)感想


別所からのサルベージです。
10年ぶり位に再視聴しました。

手塚御大の洗礼は十二分に受けていた&当時はSFに目覚めていたなかった、の理由から私は素直にロックにガツンとやられました。それだけで済みました。

今回年を食ってから見返したメトロポリスですが、今回もやはりロックです。
有名どころSFに一通り手を付け、自律型コンピュータに夢を馳せる人間になったのに、このりんたろう監督メトロポリスでは焦点がロックに定まってしまいます。
まあロックが好きっていうのも絶対原因なんだろうけどさ

■行動の見え易さ
ヒゲオヤジ→早々に明確な目標を失ってしまう(ロックのせい)
ケンイチ→早々に遭難(ロックのry)
ティマ→生まれたばかり(ry)
ロック→ティマの破壊
序盤からケンイチをはじめとする主人公たちがロックの行動によって振り回されている
中盤以降まで物語をリードしているのはロックなので、自然と注目が集まる
あとファザコンの印象が強烈過ぎ
終盤も停止ボタン(あれ自爆スイッチじゃないそうですよ・・・)を押してアイキャントストップラビンユ~

■ていうか裏主人公なんだよ多分
悲劇のロボット物なのは確かです。ペロ刑事の細やかな描写、フィフィの愛らしさ、何よりクライマックスのティマの描写はア二メ史に残る美しさ。
ただ、ロボットを作る為にはまず人間が居なければならない。それをないがしろにしてしまったら・・・というのがロックとアトラスの役回りです。

■アトラスの革命とロックの暴走
生活苦から反ロボット派のデモを行うアトラス
マルドゥーク党は自警団なのに鎮圧業務そっちのけでティマを追うロック
この二人は対立しません。二人共本来持っているはずのものを奪還しに行っただけです。
アトラスは生活基盤となる労働を
ロックは愛、または人の尊厳を

■ロボットが奪うもの
ラング監督メトロポリスは階級闘争の映画です。
この映画が時を経て手塚メトロポリス(大都会)ア二メ化に際し影響を与えました。
それは映像では地上・地下に分かれた町並みに現れ、物語にはアトラスの革命が入り込みました。そして結論となる調停者はおそらくケンイチです。
ロボットの語源robota(R.U.R)からして労働と搾取、そこから発展した人間の失業は避ける事のできない命題となりました。現実にも起こってるしね
この他に今回りんたろうメトロポリスを観て強烈に感じたのが、ロボットがただの労働力以上に人の代わりとなり、愛情さえも奪ってしまうのではないかというテーゼです。

■子供VS愛玩動物
こういう書き方嫌なんですが、分かり易いかなと思うので使います。
動物好きが高じて子供に嫉妬されてしまう親御さん、時々いらっしゃるようです。
動物をロボットに置き換えて、りんたろう・大友克洋メトロポリスです。
ストレートな割に見えてこないのは、日本SFがロボット贔屓のジャンルだからだと思います。
そう、あんなにロックが「お父さん」と言っていたのに、10年前は見えなかったんですよ。
本来人間の子供に与えられるべき愛を機械に向けてしまう。またそれだけでなく、ヒエラルキーがロボットと同じか、それ以下になる。
あの世界では人間>ロボットのカーストが明瞭に決まっています。
レッド公のロックに対する振る舞いは分かり易く冷淡で、労働ロボットへの態度と変わりありません。
レッド公の血の通わない言葉を受けても流してしまう程度に心が硬化しています。ロボットのように。
彼は「オレは人間だぞ」と言います。おそらく彼が持つ価値あるものは人間の肉体それだけだったのだと捉えています。

■メトロック
雪の広場の一連のシーンが全てだと思います。
「オレは人間だぞ」と両手を広げ、父がついにロボットを手にした事に僅かな動きで落胆を表現し、腕章を父の手で破かれ、他意なくロボットにそれを踏みつけられ・・・
隠した感情のわずかな露呈が痛々しいです。よく叫ばなかったな、とか。よく泣かなかったな、とか。
役者魂ここに極まっていて今見ても感無量。いよっ千両役者!

それでも父を諦めない。党制服を脱いで高笑い。
この作品に限っては、ロックの高笑いは悲鳴に聞こえます。
岡田さん、本業は俳優と聞いて驚きました。あの声がメトロックの端正さの一助になっているのは確実です。凛としているのに乱暴な物言いも様になる。俳優が俳優に声を与えて演技するっていいなあ。
ロックがレッド公を敬愛する理由ですが、私は与えらえなかったからこそ憧れているんだと考えています。
レッド公の愛は簡単に手に入らない→レッド公は尊い→レッド公の愛は尊い→レッド公が愛するメトロポリス・ジグラットは尊い→だから尽くして、偉大な養父のお役に立とう
こんな感じ
養父に対するアガペーがロックの燃料です。

■レッド公
来るべき世界のことを少しでも思い出してあげてください(震え声)
ロックだけでなく、マルドゥーク党の構成員(パッと見ロックと同年代が多そう)が引き取った戦争孤児達なのかもとか想像してみます。
この人、ロックに一切の関心が無いのがわかり易くて、見てて切ないです(ロックが)
ジグラットでロックが拳銃を抜いた時「自分が撃たれる」って反応してましたもんね。
自爆(じゃない)も本当驚いてた感じですよね。
バベルの塔なんて建てるから言葉が通じなくなるんだよね・・・
原作と比べて一番割食ってしまった役な気もします。
キャラのビジュアルは凄くかっこいい。

妄言
ミッチィが分裂してティマとロックになり、二人が交錯してあの結論になったんだと思います。ロックの隠れた絶望や怒りが弾丸によってティマの心臓(=heart)に打ち込まれたような。アトムの心臓は♡の形をしているので心臓と心は同義だと考えています。
メトロポリス(大都会)の細かい部分は忘れてしまっていますが、レッド公はミッチィに対して「おまえに親はいない」のような事を言って、ミッチィが「よくもぼくを造ったな」のような流れだったような・・・。表情が強烈だったのでレッド公を振り返りながら睨みつけるミッチィは頭に焼きついています。
性別の切り替えだけでなく、そういったカタルシスに繋がる辛辣な部分をロックに預けてしまった事でティマは兵器になるまで描写が弱くなってしまったのかもしれない。
実際は物理的に機械の体を確認してしまう事でティマは兵器の自覚を持ったと映像からは読んでいます。
楽屋は懐かしい面々が揃っていて賑やかなんだろうなあ~

最後に
お約束の女装・高笑い・死亡を堂々とやってのけたロックと
御大晩年にかつてない役を彼に与えて下さった大友克洋氏に喝采を送りたいです。



AIと同年公開で比較される機会が多いらしいって聞いてなるほどなと思いました。
私には優劣つけるのは無理です。両方揃って傑作。
個人的にこの比較に面白みを感じる部分は西洋SFと日本SFの価値観の逆転です。
長らく機械の反乱を恐れてきた西洋SFが徹底的に同情を引くデイビッドを作り、愛玩ロボットを贔屓してきた日本SF(というかオタク層かな)が人間を哀れんだ。
物語自体も対照的。
ジゴロのジョーが好きです。アイアムアイワズ

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